Xperia Ear Duo 開発者インタビュー[後編]

Xperia Ear Duo
開発者インタビュー[後編]

スタイリッシュでありながら「正面からは目立ちにくく、身体になじむデザインを追求しました」(八木氏)

ステレオで楽しめるのなら
音質が悪くては意味がない

Xperia Ear Duoの開発者インタビュー、後編ではさらにディープなポイントを聞いた。
自然な外音を聞きながら、音楽も楽しめる「デュアルリスニング」が最大の特徴であるXperia Ear Duo。従来製品のXperia Earが重視したコミュニケーションに加えて音楽の要素も追加したため、八木氏は開発自体が「いままでにない大きなチャレンジでした」と振り返る。
「Xperia Ear Duoでもコミュニケーションは大切なポイントですが、ステレオで聴けるようになったからには、音楽もしっかり楽しめる製品にしたかった。会話を自然に行える一方で、BGMのような感覚で音楽を気持ちよく楽しんでもらうために、多くの人に協力してもらいました」(八木氏)

音を重ねていくような感覚 
イメージは音の「AR」

音質面をサポートしたのは、もちろん投野氏だ。デュアルリスニングのメリットを活かすため、音質にどのような特徴を持たせるべきか。「コミュニケーションと音楽再生の両立は、非常に大きなテーマでした」と語る。
そもそも、ヘッドホンには抜け感のある自然な音が楽しめる「オープン型」と、低音が出て遮音性も高い「密閉型」の2種類があり、製品でのアプローチを比較すると、Xperia Ear Duoは「外音を開放しながら、音楽の音質を徐々に上げていく」、ソニーの「WF-1000X」は「音楽の音質や遮音性能を確保しつつ、外音を取りこむ」という違いがある。しかし、どちらも「コミュニケーションと音楽の両立」という最終ゴールは同じなのだ。

1980年に入社した投野氏は、前年発売の初代ウォークマン®とMDR-3を何度も試聴。当時から音づくりの参考にしたそうだ

それぞれにメリットがあるなかで、投野氏がXperia Ear Duoの音質の指針としたのは、初代ウォークマン®の付属品(別売)だったオープン型ヘッドホン「MDR-3」のさわやかさ。「人の声はクリアに、音楽はふわっとした空気のように。映画で主人公の周りに音楽が流れているイメージで、“人生のBGM”みたいなものを提供できるような音を目指しました」と表現する。

脈々と続く技術の変遷と
最新技術との融合で実現した

デュアルリスニングを実現するうえで欠かせないのが「音導管設計」。投野氏によれば、音導管設計は昭和37年にソニーの音響技師が生み出した「パイプ・マイク」(チューブ・マイクとも呼ばれる)が、技術的なベースになっているとのこと。音導管音響は、古くは飛行機の客室サービス用のエアチューブ式ヘッドホンに採用され、近年でも研究されてきた技術といえる。
「パイプ・マイクはソニーの発明で、継続的に発展しています。脈々と続く技術の変遷とともに、無線通信をはじめとする最新技術との融合によって、Xperia Ear Duoは実現したと感じています」(投野氏)

Xperia Ear Duoのパーツ構成

パイプ・マイクの技術は、ヘッドセットのマイクなどにも利用されている

金属パイプは成型こそ困難だが
低音が向上しデザインもスリムに

音導管の採用にあたって、パイプの設計はさまざまな部分に影響を与える。例えば、素材を金属にすると低音を底上げするために内径を広くしても、強度が高いのでスリムな細いデザインにできるといった利点がある。ただし、成型が困難になるという欠点は前編で紹介した通りだが、そこには「金管楽器の特殊な曲げ技術が活用されています」(平氏)。
また、穴の開いたリングサポーターでは「聴いている音が外に漏れないか?」と不安になる人もいるだろう。投野氏いわく、音導管設計ではドライバーユニットの音がパイプを経由して耳穴近くで放出されるため、低音まで効率良く耳穴に届けられるとのこと。そのため、「普通に音楽を聴くレベルの音量であれば、音漏れの心配はほぼ皆無でしょう。静かな部屋でも、何を聴いているのかわからないほどですよ」と胸を張る。

パイプにはステンレス素材を採用。成型には苦労したが、スタイリッシュなフォルムが可能になった

これまでに取り貯めた耳型が
下掛けスタイル開発の礎に

音導管のパイプが耳の下を通る「下掛けスタイル」も、Xperia Ear Duoの大きな特徴のひとつだ。装着したときに正面から目立ちにくく、メガネの影響を受けにくいといったメリットがある。
いままでにないこのスタイルの完成にひと役買ったのが、ソニーが長年にわたって収集してきた社員などの「耳型」。じつは投野氏、以前はこの耳型を採取する「耳型職人」の2代目を務めていたことでも有名だ。

1000個近くある耳型から特徴的なものを100個前後ピックアップし、デザインや装着感などを検証したそうだ

「人の耳は大きさも形も千差万別ですが、調べてみると耳の上側より下側の方が個人差は少なく、下方のループにすることでこの個人差を吸収しやすいとわかりました。実は以前から、社内の別プロジェクトが新しいスタイルとして下掛けのパイプ音響に取り組んでおり、それが本機に応用されました」(投野氏)
そこから平氏のチームが、耳型を使って耳の形に合わせた重心の取り方や、パイプのルートの取り方などを何度も検証。絶対に落ちないと思えるくらいの装着感とともに、高いデザイン性を追求した。

装着感の良さを目指して
形状や素材を何度も試行錯誤

装着感や安定性、快適性などは、耳穴に入れるリングサポーターが大きなカギを握る。そのため、平氏は「何度も試行錯誤を重ねた」と語る。
「形状は、安定性の高い角付きの試作品なども作って評価しました。しかし、総合的な評価からいまの形状に決まりました。また素材は、柔らかくすると快適性が上がる一方で、安定性は落ちてしまいます。そこで今回は、最終的に硬さの違う2種類の素材を用意。パイプに接続する根元には硬めの素材を、耳に触れるリング部には軟らかめの素材を使いました」(平氏)
なお、装着感の評価は実際の人間の耳で何度もチェックしたという。通常のイヤホンであれば2時間が目安のところを、平氏は「Xperia Ear Duoはコミュニケーションデバイスだから、もっと長い時間装着してもらいたい」と考え、長時間装着しても違和感が出ないようなレベルを目指したそうだ。

リングサポーターはいくつもの試作品が作られた。この苦労があったからこそ、「安定性や快適性には自信があります」(平氏)

内蔵センサー群も活用して最適な音量に調整してくれる

左からソニーモバイルコミュニケーションズの平則顕氏、ソニービデオ&サウンドプロダクツの投野耕治氏、ソニーモバイルコミュニケーションズの八木泉氏と石田明寛氏

ソフトウエアにおいても、さまざまな試行錯誤を重ねることで利便性が高められている。石田氏によれば、周辺の騒音に応じて音量を自動調整する「アダプティブボリュームコントロール」では、本体のマイクに加えて、内蔵するセンサー群なども活用しているそうだ。
「電車の移動中に音量が上がるのはいいのですが、そのままの音量では音漏れする心配もあります。そこで、周囲が静かになるとすぐ元の音量に戻すなど、安全に配慮した仕組みも取り入れています」(石田氏)
開発者のたゆまぬ努力とさまざまなチャレンジにより、多彩な機能と利便性を実現したXperia Ear Duo。ウェアラブルデバイスの新たなスタンダードとして、あらゆるシーンで幅広く利用されることを期待したい。

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